「Web屋に未来は無い」論について考えてみる

何度も同じ話がわいてくるなーと思いつつ。
おおむね、「もう駄目だ」の根拠というのが

  1. JimdoとかWixとかタダでそこそこのテンプレで“ホームページ”が作れるサービスがあって、多少パソコンが使える人なら簡単なサイトを作ることができる。
  2. ただの“ホームページ制作”は、掃いて捨てるほどいるフリーランサーが低価格競争やってて到底ペイしない。
  3. 東南アジアなど人件費の安い外国で日本の10分の1以下の人件費で作れる。要するに現在5万のものが5千円でやれる。

ってのが挙げられる。簡単なサイトを作るだけなら、Jimdoとかの無料との勝負になるのでそういう簡単な制作の仕事は。激減することは間違いない

ただこれって今に始まった話じゃない。多少なりともパソコン使える人はとっくの昔からホームページビルダー使ったり、(沖縄なら)てぃーだブログをサイト代わりにしたりしている。
Jimdoとか使う層もこれ。
何が言いたいかというと、先の根拠の1と2は、元から存在しなかった市場なので、これを根拠に「これからは〜」とかいうのはスタート地点が間違ってるよねと。
それでもそういう低価格市場はこれから先も存在する。PCを使えない人は結構多いのだ。ただ、そこはHTML,CSSしか知らない人が実績を積む場所にしかならないのではないかと思う。

次に、ウェブサイトをオフショアで超低価格でできるよ、というのは、実体としてそれほどうまくいってないんじゃないかと思ってる。まあ観察対象が少ないので断言はできないのだけど。

オフショア言葉や文化の違いを超えて指導できるかという結構高度な技能が要求される。その能力を持っている人が、なんぼ現地の人件費が安いとはいえ二束三文で得られるはずがない。

そもそもJimdoのようにテンプレ任せ機械任せでタダでできるものと勝負するのにたとえオフショアでも人に作らそうって時点で筋が悪いのではないかと。つまり低価格化の波はいずれオフショアでも追い付けなくなる。

要するに単純なウェブ制作ってのは既に市場がないですよと。

そんな環境でウェブ制作会社って何やってるかというと、もはや単純なウェブ制作なんてやってないんですよ。

まあやってる人はわかってるだろうけど、ウェブ屋の目的は

  1. 顧客の売り上げを向上させる
  2. 商品を人目につかせる
  3. 顧客の業務を効率化する

ってな事柄。売ってるのは“ホームページ”じゃなくて、“利益を生み出す装置”。

その「装置」を作るために

  1. ランディングページなど売り上げや問い合わせに直結するサイト作りのノウハウ
  2. SEOのテクニック
  3. 人目を引かせるためのデザイン(情報のデザインや視覚・インターフェイスデザイン)を構築する技術
  4. データベースやら何やらと連携して情報を出力するシステムを作る技術

をウェブ制作会社は保有している。

これ、一人で全部できる人は少ない。というかそれぞれマーケティング、ライティング、ビジュアルデザイン、コーディング・プログラミングに特化した複数の人をまとめたほうが効率的でより高度な要求にこたえられる。そのために製作会社という形をとらざるを得ない。

もちろんフリーランスとかフルスペックなんちゃらとかは上記の能力を多少浅くても全部持ってることがあるわけだけど、これだけのものを一人でやると、時間が足りない。競争相手が会社組織では専門の深さとスピードでフリーランス一人では勝ち目がない。

フリーランス生存戦略はどうあるべきか

制作会社と同じ能力なら、会社組織が受けられないような低価格案件がフリーランスの市場になる。

フリーランスが単価を上げるには、制作会社にはいない人材にならないといけない。
収入が安定している制作会社の社員は、技術を伸ばすモチベーションが低下する。腕を磨かなければ死んでしまうフリーランス(傭兵)は技術を伸ばす動機の面で組織内の人材より優位に立つ。
T型人材というのがあるが、フリーランスはこれの縦棒をかなり伸ばすことができる。それは会社組織にはない人材なので、どうしても高度な技術が必要な場面において、制作会社が協力を求めてくるようになるレベルまで自分の能力を上げればよい。

ちなみにフルスペックなんちゃらというのは無視していいと思っている。
よく意識高い系の経営者がフルスペックの人材が必要だと言うけど、それは社員の能力を束ねてフルスペック組織にすることのできない無能をさらしているだけ。何でもできるなら自分で会社作るわ。
専門を深めるうえで周辺の技術も把握するようにしていたら勝手にフルスペックになるのであって、最初からあれもこれもと手を伸ばすと浅く広くにしかならない。その先にあるのは雇用の調整弁としてあれにもこれにも使えるというレベルでしかない。

ただ、安い案件しか得られないフリーランスでは、現場で腕を磨く機会が乏しくなる。機会が得られるなら一時的に組織に属して経験を積むのも必要だと思う。

とりあえずみんな頑張って生き残ろうぜということで。